第1章

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私は携帯電話をテーブルの上に置いて立ち上がる。 部屋を出ようとすると実家の喫茶店の常連のお客さんが数人連れ立ってやってきた。 高柳さんが部屋の前まで案内してきてくれたらしい。 「四季ちゃん!」 お客さんたちが泣きそうな顔と驚きの表情を浮かべている。 「お父さんは中にいますから。見てあげてください」 私はそれだけ言って部屋から出る。高柳さんに視線を送ると小さくうなずいてくれた。 お母さんはやってきてくれたお客さんたちに正座をして頭を下げた。 「どうして。数日前まで元気だったじゃない」 そんなお客さんたちの質問を高柳さんが丁寧に受け答えてくれている。 私はその光景を横目に葬儀場の外に出た。 相変わらず無駄にいい天気が広がっていた。
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