第1章

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「ごめんね。ありがとう」 「いいよ。お母さんは気にしなくて。お父さんの側にいてあげて。着替えとかは私が持ってくるから」 ありがとうともう一度いってお母さんは立ち上がって棺に向かう。目の前に座ってお父さんの頭を優しく撫でていた。その顔は優しさと悲しさが入り混じっているような表情だった。 それから私たちは控室で無言のまま時間を過ごす。私はお母さんの着替えを持って来たり、簡単に食べられそうなものを買ってきて食欲のないお母さんになんとか食べさせたりした。 通夜の時間が近づいてきて私は受付に座った。様々な人たちが来てくれてそれぞれが皆がお悔やみの言葉をかけてくれる。 事務的な手続きをしていたおかげなのか、来てくれた人たちに感謝の気持ちはあったが悲しい気持ちはさほどわいてこなかった
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