第1章

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なんで泣けないんだろう。なんて考えているとあっという間に棺の蓋が閉められた。 最後にお父さんの顔を確認する。見慣れた顔だった。穏やかにまるで眠っているような表情だった。 出棺前に喪主からの挨拶としてお母さんが前に出て参列者の方々にお礼の言葉を述べる。 随分立ち直ったのかお母さんは凛とした態度でしっかりとした言葉を話していた。 親族や関係者で棺を持って移動台に棺を乗せ換える。 火葬場に運ばれてからは早かった。棺は大きな自動扉の前に運ばれて中に静かに入れられた。 最後扉が閉まるとき、お母さんが流れる涙をぬぐおうともせず見ていたのが印象的だった。 お父さんの体が焼かれている間私たちは用意された弁当を食べ親戚の人たちとわずかながらの交流をした。 二時間ほどたった後、係員さんに呼ばれていくと台の上には変わり果てたお父さんがいた。 思ったより小さな骨壺に骨を入れて葬儀は終了となった。 その後は親族が再び葬儀場に戻って初七日をやることになっていた。
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