第1章

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多くの参列者はすでに帰宅しており初七日の会場には本当に親しい人たちが十数人いるだけだった。 静まり返った会場にお坊さんがやってきて遺影とその前に置かれた骨壺の前で手を合わせた。 来てくれたお坊さんは女性で先ほどまで来てくれていた住職さんの奥さんらしかった。 奥さんのお経は静かでとても心地よい声だった。まるで歌うようなそのお経はここ三日間で疲れがたまった体を睡魔に誘うものだった。 お母さんも一通り葬儀が終わって緊張が緩んだのか、瞼がうすく下りていた。 ああ、もう終わりなんだなと突然実感がわいた。 すべてが終わって。 ふと、思った。 もう泣いてもいいんだ。 ここで泣かないとお父さんの為に泣ける場所はなくなる。 そう思った時、突然涙があふれてきた。
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