第1章

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お父さんといっても実の父親ではなく。お母さんが再婚した相手だ。 再婚したのは七年前だったから実質一緒に暮らしたのはその七年間だけだ。 不思議な人だった。大雑把で細かいことには気は回らないくせに、私にはずっと気を使っていた。 私がお父さんのことを「お父さん」と呼ぶようになってもお父さんは私の事を「四季さん」と呼んだ。 私とお母さんと話すときはいつだって敬語だった。 お母さんはあれはあの人の癖だからと笑いながら言ったのを覚えている。 お父さんのしゃべり方を聞いて育ったからだろうか。私も人と話すときは敬語の癖がついてしまった。 人に不思議な顔をされることもあるけれど、自分自身その癖は嫌いではなかった。 不思議な人だった。体は大きく顔も強面だった。 でも、私はお父さんに怒られたことがない。 私が何か悪いことをすれば怒ってくれるのはお母さんの役目で お父さんはそれを困った顔でフォローしてくれる人だった。 包容力のある人だったといってもいいのかもしれない。
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