第1章

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お父さんと最後に会話したのはいつだろうと思い返してしまう。 特別な会話もしていない本当にどうでもいいような世間話だった気がする。 また、話筋がずれた。 お父さんが入院したのは昨日の夕方だ。突然容体が悪くなって病院に運ばれた時には意識が朦朧としていたらしい。 そのまま緊急手術になって。手術は成功したもののお父さんの体力が持たなかった。結局そのまま目覚めることはなかった。 私が連絡を受けたのは手術が終わった後だ。お母さんの実家で働いている高柳さんから連絡を受けて私は寮を飛び出して電車に飛び乗った。 でも、結局電車の中で訃報を聞くことになった。 電車の中で電話を取ってしまったがその辺りのマナー違反ぐらいは大目にみてほしかった。 私が病院に到着する前にこの葬儀場にお父さんが移動されたと聞いて、葬儀場に到着したのがほんの数時間前のことだった。 実家に帰りたくないと思ったは今日が初めてだった。 電車の窓から見える景色は不自然なほど平和だった。 突き抜けるような青空に聞こえる風の音が虫の声がまるで何事もなかったかのようにいつものようにいつものごとくの光景が広がっていた。
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