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五月の連休、私は再び彼女の家に誘われた。
この時も、彼女の家族は留守だった。娘も、祖父母と泊まりがけで出かけていた。アルコールが入ると、彼女の台詞は挑発的になった。過去の性体験らしきものが会話の端々にあらわれる。姿勢も崩れて、だんだん際どいものになってくる。テーブルを挟んでいたものの、私はじりじりと後じさりを始めた。
「碧里。私、このまま帰った方がいいのかな」
このまま夜が更けていけば、当然、同衾という展開になるだろう。だが、またあの恐ろしい悲鳴をきくはめになるのは厭だ。過去の人間への嫉妬で狂いそうになるのも。
だが、碧里はそこで、ふっと真顔になった。
「これ、なんだかわかる?」
彼女が取り出したのは、銀紙に包まれた錠剤だった。
「何の薬?」
「発作をおさえるの。ちょっと眠くなるのが玉に瑕だけど」
なるほど、それは神経系に作用する錠剤らしい。こういう薬はだいぶ進歩していて、そう馬鹿にしたものではないときいている。適量ならば発作も抑えられるのかもしれない。
黙ってそれを見つめていると、碧里は銀紙を剥がし、目の前でそれを飲んだ。
「私が眠りこむ前に……できる?」
挑戦、されている。
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