第1章

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 こうまでされて、できるかと言われては引き下がれない。  布団の一枚も敷きたかったが、強い視線に逆らえず、そのまま押し倒すはめになった。  急ぐ訳だった。  三十分もしないうちに、彼女は泥のように眠り込んでしまった。  薬の作用らしく、本当に目ざめない。深い、深い眠りだった。 「困っちゃったなあ」  勝手知ったる他人の家、私は押し入れから適当な布団を出すと、彼女を移した。  さて、どうしたものか、と思案にくれる。  薬を飲まなければできないような行為を、本当にすべきなんだろうか。  いや、飲んでまでしようとするなんて、碧里は意地になってはいないだろうか。  そんな無理まで、させていいのだろうか。  それで彼女が、心地よいのかどうか。  服を整え、家に電話を入れた。碧里の家に泊まることを告げて、再び彼女の傍らに戻った。 「まあ、そんなに度々、できることでもないんだし」  薬を飲むのは、彼女自身がつらくならないためだ。そして、私に発作を見せて、私も辛くさせないためだ。そうまでして寝てもいいというのなら、いっそ、うんと甘えてもいいのかもしれない。 「ねえ、風邪ひいちゃうよ」
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