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毛布をかけているとはいえ、裸の肩が寒そうだ。服を着せたいと思ったが、この状態ではそれも難しい。
えい。
こうなったら、もう一回、据え膳くっちゃおう。
毛布を一枚出すと、服を全部脱ぎなおした。
「眠っている間に卑怯だけど、私が一番したいこと、させてもらうからね」
脇へそっと滑り込むと、苦労して彼女を抱き寄せた。腕のつけ根と左胸に彼女の頭がくるようにして、肌をあわせる。
「ん……」
食いしばったような口唇から、軽い吐息が洩れる。
「ごめん。起こした?」
彼女は返事をしなかった。
そのまま、身体半分の重みをのせてきた。
一瞬、二ラウンド目が始まるかと思って、身構えた。だが、その重さは、明らかに眠っている人間の重さだった。
私はホッとした。ひどく重いが、緊張でガチガチになっているよりは、ずっといい。
「碧里」
規則正しい呼吸が応える。
自分の腕の中にある、この無防備な眠り――そう、これが私の一番の望みだった。隔ても何もなく、ただ抱き合って、やすらいでもらうこと。
私は二枚目の毛布を引き寄せて、自分の肩も覆った。
「おやすみ」
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