ダイエット神は誘惑する

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ダイエット神は誘惑する

 「デブ」は論外、「肥満」という言葉もこの世から根絶すべきだ。  滅びてしまえっ、コンチクショウ!!  わたしは食べることが好きだ。なによりも大好きだ。愛しているのだ。  恋愛も、金銭も、出世も、名誉も、どれもこれも食欲には到底敵わない。  小さい頃から食い意地だけは人一倍あった。女の子なのに刺身とか天ぷらが好物だった。  親元を離れて独り暮らしをしたとき、まず最初にしたのは唐揚げ1キロ一気食いだ。  独りなのに冷蔵庫はムダに450Lだし、そこに非常食と称してステーキ用のお肉様からタッパにいれたオカズ君、冷凍食品にアイスちゃん、ヨーグルトにフルーツを常備していた。  それでも自慢ではないが、一度も賞味期限を切ったことはない。  そんな目くるめく食欲に溺れた結果、体重計の数字が踊り狂った。  スカートが苦しくなり、デニムでしゃがめなくなった。なぜだっ!?  わたしの友達には1日5食が当たり前の強者がいる。  それも野菜をとらずに肉しか食さない貴族のような食生活だ。それなのに人も羨むスマート美人で超健康体なのである。  不公平だ。神様は間違っているよ!  そんなワケで若年性糖尿病まっしぐらなわたしは、意を決してダイエットを敢行することにした。  それもコレも、すべては食べるためである。この期に及んで、まだ食い意地が張っているから救いがない。  案の定、10代のときには簡単に落ちた体重が、ダイエットを決めた頃には全然落ちなくなっていた。落ちたのは悔し涙だけである。もう若くないのね。  わたしは一念発起して、あらゆるダイエットに挑戦した。  黒酢ダイエット、きな粉ダイエット、バナナダイエット、豆乳ダイエット、おにぎりダイエット、炭水化物ダイエット、グルテン抜きダイエット等……ことごとく玉砕した。  みんな食べるダイエットばかりだが、それは気のせいにしておこう。
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