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こうなったら、もう神頼みしかなかった。
「神様、お願いです。わたしのダイエットが成功するようにしてください」
神社仏閣に行きまくり、祈りに祈り倒して祈願した。
その甲斐あってか、ある日それは突然に訪れた。
「おぬしの願いは聞き届けられた」
わたしの家に神様がやって来た。
「わしはダイエットの神であるぞ」
神様が言った。
「ダイエットの神様って……」
わたしは呆気にとられた。
頭巾をかぶったふくよかな顔に、大きな袋を提げて小槌を持った、これはいわゆる──
「大黒様ですよね?」
「いかにも七福神の大黒天じゃよ」
大黒様が口髭を撫でながら答えた。
「えっ、大黒様なのにダイエットの神様なのですか!?」
「今でこそ七福神の一柱じゃが、その昔は台所の神様として祀られていたのじゃよ」
「台所の神様なのに、なぜダイエットなのですか?」
わたしは訊かずにはいられなかった。まさに神にもすがる思いだ。
「それはおいおい理解するじゃろうて」
大黒様が眼の線を弧にして言った。
「それよりもじゃ。その手に持っているモノはなんじゃ?」
「こ、これはっ……」
指摘されて口ごもる。手につまんでいたのは板チョコだったからだ。
「チョコレートは脂肪を燃焼させるお菓子なので……」
「だからダメなのじゃよ。ダイエットには強い心が肝心なのじゃ!」
そう言われてグウの音もでなかった。食欲は人一倍強いが、精神力は人二倍弱かった。
「ダイエットを成功させるには、まずおぬしの弱い心を鍛えるのが先決じゃぞ」
“じゃぞ”ってなにをするのだろうか?
「とりあえず、もう昼飯時じゃな」
部屋に上がりこんだ大黒様が、嘆息まじりにつぶやいた。
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