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静かな廊下から足音が聞こえたので病室の入り口に眼を向けると、見覚えのある女が病室に入ってきた。女は野口と眼が合うと顔が強張った。足を止めずに女は野口のそばに立った。「野口くん久しぶりね~あなたがいなくなってから大変だったんだからね!」「松崎さんお久しぶりです、でもどうしてここに?」「出産後にガンが見つかってね。」
「あなたがいなくなったから私の仕事が増えたじゃない!どうしてくれるのよ!」「あっそうだ仕事の時みたいにあなた私のために動きなさいよ!」「私には待ってる子供がいるのよ!私のために死んでよ!」松崎は妊娠による体調不良が原因で雑用を全て野口に押し付けていた。妊娠中にアルコールを摂取できないが、松崎は飲み会の空気が好きなので、仕事に追われている野口に飲み会の開催を強要していた。その事を思い出し、松崎の手が首に伸びてきた。野口は激しい憎悪の念を込めて、右拳を松崎の顎先に叩き込んだ。ピクリとも動かなかった野口の右腕が激しい憎悪により動いた。松崎は床に倒れた。野口の右腕が動いたことに一番驚いたのは野口自身だった。松崎が起き上がってくる前に動いたのは野口だった。ナースコールでスタッフを呼び松崎の片付けをお願いした。自分をこんな目に合わせた原因の松崎を自分の手で始末出来たことに達成感を感じ野口は安堵の笑みを浮かべた。
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