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『うう…ん…』
眠ったまま克巳は身体を動かし明夫に背を向けた。
その時、明夫の携帯が鳴った。
明夫はズボンのポケットから携帯を取りだし電話に出た。
『もしもし…』
『もしもし明夫さん』
『蛍君?』
『はい』
『今、どこにいるんだ』
『未来の家にいます』
『無事でよかった、消えたから心配してたんだ』
『すみませんでした…それで明夫さん、今、どこにいるんですか?』
『克巳と一緒にいる』
明夫は眠る克巳を見ながら言った。
『父さんと…そうですか…』
『蛍君?』
『何でもありません、また電話をします』
蛍は電話を切った。
『……』
電話を切って携帯をズボンのポケットに入れると明夫は目を閉じた。
それから暫くして目を覚ました克巳は身体を起こし全裸姿に驚いた。
『何で裸なんだ…』
克巳は向かいのソファーに座っている明夫に目を向けた。
克巳はソファーから立ち上がり衣服に着替えるとドアに行き開けようとしたその時、ドアが開き雅とぶつかった。
『雅』
『目が覚めたんだな』
『……』
『薬の効き目は無くなったようだな』
雅は中に入りドアを閉めると克巳の頬に触れた。
『俺に触れるな』
克巳は雅の手を払い除け睨み付けた。
『怒ったのか』
『……』
『女じゃあるまいし男とセックスしたくらいで怒るなよ』
『何だと』
怒りが込み上げてきた克巳は雅の頬を殴った。
『殴るなんて酷いじゃ…あ…』
雅は涙を流す克巳の姿に驚いた。
明夫は克巳に近づき肩に触れると『帰ろう』と言って明夫は克巳を連れて社長室を出ると裏口から出ていった。
雅は床に座り頭を抱えた。
歩きながら明夫は隣で歩く克巳を見つめた。
『……』
克巳は明夫の手を掴み足を止めた。
『どうしたんだ?』
『もう美佳とは結婚できない、俺を美佳がいないところに連れていってくれ』
『……』
『俺が好きなんだろ、連れていけよ』
克巳は明夫の身体に触れながら言った。
『今の克巳は混乱している、美佳さんの元に帰ろ』
明夫は克巳から離れ背を向けると歩き始めた。
『俺がこんなふうになったのはお前のせいだろバカやろ…』
克巳が明夫に向けて叫ぶと雨が降りだした。
『……』
足を止め振り返った明夫は歩いていく克巳の後ろ姿を見つめた。
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