未来から来た恋人と息子

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『驚かないでくださいね』 『驚くって何を?』 『子供を生んで1週間後に美佳さんは病気で亡くなります』 『え…私が…嘘ですよね』 『嘘ではありません、未来の美佳さんは病気で死んでます』 『……』 美佳は無言のまま紅茶を見つめた。 『そんな悲しい顔をしないでください』 『病気で死ぬんでしょ…』 『未来の美佳さんが病気で死んでも、今のあなたが病気で死ぬとは限らない』 『……』 『美佳さん』 明夫は美佳の手に触れながら顔を見つめた。 『…帰ります…』 美佳は椅子から立ち上がりお会計に行った。 『俺が払います』 明夫が2人分のお金を支払うと美佳と共に喫茶店を出ていった。 『美佳さん、俺が言ったことは気にしないでください…』 『はい…未来の私は死んでも、今の私は死なない』 無理に笑うと美佳は明夫を背を向け歩いていった。 明夫は悲しげな顔で美佳の後ろ姿を見送った。 そして明夫はホストクラブの店に向かった。 ーホストクラブの店ー ドアの前で入ろうか入らないか迷っている明夫に雅が声をかけた。 『久しぶりだな』 『……』 明夫は雅に目を向けた。 『克巳に会いに来たんだろ』 雅はドアを開け中に入ると準備をしている克巳に声をかけた。 『克巳、お客さんだぞ』 『はい』 手を止めドアに近づいた克巳は明夫を見て驚いた。 『…久しぶり…』 『何しに来たんだ』 『ちょっと話せないか』 『わかった』 克巳と明夫は店を離れ近くの公園に行った。 そして克巳と明夫は並んでベンチに座った。 『話って何だ』 『偶然なんだがさっき美佳さんと会って話をしたんだ』 『まさか変なことを言ったんじゃないだろうな』 『美佳さんに生きててほしくて…話すつもりはなかったんだ、妊娠してる姿を見て…すまない…』 『……』 ベンチから立ち上がると克巳は走って公園を離れていった。 その頃、美佳はスーパーで買い物をしていた。 1時間後、両手に荷物を持ってスーパーを出た美佳はタクシーで家に帰った。 30分後、タクシーは家の前に止まり支払いを済ませると美佳は両手に荷物を持ってゆっくりとおりた。 『大丈夫ですか』 『大丈夫です』 『ありがとうございました』 後部座席のドアが閉まるとタクシーは動き始め離れていった。
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