未来から来た恋人と息子

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雅は椅子から立ち上がり克巳に近づいた。 『入院手続きがあるから先生のところに行くぞ』 『すぐに戻るから待ってて』 克巳は鞄を明夫に渡し雅と共に部屋を出ていった。 晃は椅子を明夫の前に置き『座ってください』と言った。 『すみません』 鞄を机の上に置くと明夫は椅子に座った。 晃も椅子に座り眠る美佳を見つめた。 『……』 『どうして病院に運ばれたんですか』 明夫が口を開いた。 『雅が彼女を混乱させてしまったんです』 晃が答えた。 『混乱?』 『雅の携帯です』 晃は雅の携帯を明夫に差し出した。 『……』 明夫は雅の携帯を受け取った。 『画像を見てください』 『……』 明夫は克巳と抱き合っている自分の画像を見て驚いた。 『これを彼女に見せたんですか』 『はい…そのショックで倒れました』 『……』 明夫は椅子から立ち上がり自分の鞄を持つと背を向けた。 『どこに行くんですか?』 『帰ります、彼女が目を覚まして俺がいたらまた倒れるかもしれない…』 明夫は病室を出ていった。 それから暫くして入院手続きを済ませ克巳と雅が病室に戻ってきた。 『あれ?晃さん、明夫は?』 『連れの方は帰ったよ』 『どうして…』 『彼女が倒れた理由と画像を見せたら帰りました』 『画像って何ですか?』 『これです』 晃は雅の携帯から画像を克巳に見せた。 克巳は晃から携帯を奪い取り雅に目を向け『これを美佳に見せたのか』と怒った口調で言った。 『美佳に教えてやったんだ、克巳は不倫をしてると』 『……』 克巳は雅の頬を殴り胸ぐらを掴んだ。 『やめなさい』 晃は克巳の身体を掴み雅から離れさせた。 『離してください』 『ここをどこだと思ってるんだ』 『晃…離してやれ…』 口元の血を手で拭いながら雅が言った。 克巳から手を離し自由にすると晃は雅に近づきハンカチで血を拭った。 『大丈夫か』 『あとは克巳に任せて俺達は帰ろう』 『そうだな』 床に落ちている携帯を拾うと晃と雅は病室を出ていった。 『……』 克巳は椅子に座り頭を抱えた。 それから暫くして気を失っていた美佳が目を覚ました。 『ここは…どこ?…』 美佳が口を開くと克巳は顔をあげ椅子から立ち上がると美佳に声をかけた。
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