未来から来た恋人と息子

29/114

15人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
『美佳…』 『…克巳…』 『看護婦さんに…』 克巳は慌てて病室を出ていった。 美佳は身体をゆっくりと起こしドアに目を向けた。 その時、ドアが開き先生と看護婦と克巳が入ってきた。 『具合はどうですか?、お腹が痛いとかありますか』 『大丈夫です』 『そうですか…明日、改めて検査をします』 『はい』 『何かありましたら看護婦に伝えてください』 『わかりました』 『それではお大事に』 『ありがとうございました』 克巳は出ていく先生と看護婦に頭を下げ美佳に目を向けた。 『……』 美佳は身体を起こしたままうつ向いた。 『美佳…』 『メールを送ったのにどうして連絡してくれなかったの』 『メール?』 克巳は机の上に置いている鞄を椅子に置き中から携帯を取り出すと受信ボックスを見た。 『お前からの受信はないけど』 携帯を見ながら克巳が言った。 『…休みたいから帰って…』 美佳は身体を倒し背を向けると掛け布団をかぶった。 『明日、また来るから』 克巳は鞄を持って病室を出ていった。 その時、美佳は掛け布団をかぶったまま涙を流した。 その頃、明夫は鞄を持ったまま街をさ迷っていた。 『……』 『明夫さん』 『蛍君!』 明夫は立ち止まり走って近づいてくる蛍に驚いた。 『どうしてここに…』 『心配で…』 『蛍君…』 『父さんと母さんと何かあったんですか?』 『人のいないところで話さないか』 『わかりました』 蛍と明夫は人が来ないビルの屋上に向かった。 ービルの屋上ー 『……』 明夫は鞄を地面に置き蛍に背を向けた。 『明夫さん?』 『驚かないで聞いてくれ…』 明夫は克巳が雅に襲われたことや美佳が妊娠中に倒れ入院したことを話した。 『……』 蛍は言葉を失った。 『このまま俺と克巳が愛し合ったら、美佳は流産してしまう』 振り向き無理に笑う明夫の目から涙が流れた。 それを見て蛍は驚いた。 『明夫さん…』 『ゴメン、男の癖に泣いたりして』 明夫は手で涙を拭った。 『男だって泣くことはありますから…』 『……』 『明夫さん、母さんが入院している病院を教えてくれませんか?』 『いいけど、会いに行くのか』 『うん、母さんに話があるから』 蛍は病院の場所と病室を書かれた紙を明夫から受け取った。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加