未来から来た恋人と息子

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『どうしたの?』 『何でもないです…午後から検査ですよね、俺、帰ります』 蛍が背を向けドアに近づいたその時、美佳が口を開いた。 『明日、明夫さんと一緒に来て…それとお母さんは死なないから』 『わかりました』 蛍は病室を出ていった。 『……』 2枚の写真を見つめながら美佳は離婚を考えていた。 そして看護婦が病室に現れた。 『美佳さん、検査に行きますよ』 『はい』 写真を机の引き出しに入れると美佳はベットからおりた。 『車椅子に座ってください』 『はい』 車椅子に座ると美佳は看護婦に診察室に運ばれていった。 その頃、家に戻った克巳はベットで仰向けで倒れていた。 『まさか…明夫が美佳からきた受信メールを消したんじゃ…思いたくないけど』 克巳は身体を起こしベットから離れると携帯だけを持って家を出ていった。 ー廃墟ビルー 明夫は部屋の小窓から空を眺めていた。 それから暫くして物音がし明夫は部屋を出ていった。 そして明夫はやってきた克巳と会った。 『克巳…』 『明夫に聞きたいことがあって来たんだ』 『何だ』 『美佳からきたメールを消したのもしかして…』 『あぁ…俺が消した』 明夫は真剣な顔で答えた。 『どうしてそんなことを…』『お前を美佳のところに行かせたくなかったから』 明夫は克巳を抱き締めた。 『明夫…』 『俺が克巳と美佳を狂わせた、すまない』 『俺、美佳と離婚するよ』 『え!』 明夫は克巳の顔を見つめた。 『俺…明夫のことが好きになったみたいなんだ』 『克巳』 『嬉しくないのか』 嬉しそうな顔をしない明夫に克巳は少し怒った口調で言った。 『そりゃ嬉しいさぁ…嬉しいけど…』 『……』 克巳は明夫に抱きつきながら口づけを交わし火照った顔で明夫を見つめた。 『キスなんかされたら抱きたくなるだろ』 『抱いてくれよ』 『克巳』 明夫は克巳をゆっくりと床に倒し身体を重ねた。 それから暫くして愛し合った克巳と明夫は寄り添いながら眠りについた。 30分後、蛍が廃墟ビルに戻ってきた。 『……』 蛍は寄り添いながら眠っている克巳と明夫に驚いた。 明夫は気配を感じ目を覚ますと身体を起こし蛍に目を向けた。 『ちょっといいかな』 『あぁ』 克巳を起こさないように立ち上がり衣服を整えると明夫は蛍と共に隣の部屋に行った。
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