未来から来た恋人と息子

32/114
前へ
/114ページ
次へ
『お母さんに甘えてきたか』 『うん…』 『そうかよかったな』 『母さんがね、話があるから明夫さんと来てくれって』 『俺も?』 『うん』 『……』 『じゃあ俺はホテルに帰るから』 蛍は部屋を出ていった。 明夫は椅子に座りうつ向いた。 その頃、眠っていた克巳が目を覚ましていた。 『どこに行ったんだろ』 立ち上がり衣服を整えると克巳は部屋を出て隣の部屋を覗いた。 『こんなところにいたのか』 克巳は明夫に近づいた。 椅子に座ったまま明夫は顔をあげ克巳を見つめ『さっき蛍君が来たんだ』と言った。 『未来の息子が、何で起こしてくれなかったんだよ』 『明日、俺と蛍君で美佳さんの見舞いに行ってくる』 『2人だけで?』 『蛍君が見舞いに行ったとき、美佳さんが言ったそうだ、俺と2人で見舞いに来いって』 『美佳はすべてを知ったんだな…』 克巳は不安げな顔で明夫を見つめた。 『そんな顔をするな』 明夫は克巳の頬に触れた。 『だって…』 『明日、美佳さんに俺の気持ちを伝えてくるよ』 『明夫…』 『仕事があるだろ家に帰ってゆっくり休め』 『仕事帰りにここへ寄ってもいいか』 『あぁ』 『じゃあ帰るよ』 『気を付けて帰れよ』 『うん』 口づけを交わすと克巳は廃墟ビルを離れ家に向かった。 次の日の朝7時、廃墟ビルに蛍がやってきた。 『父さんは?』 『仕事があるから家に帰らせた』 『行きましょうか』 蛍と明夫は廃墟ビルを離れタクシーで総合病院に向かった。 それから時間が過ぎタクシーは総合病院の前に止まりお金を支払うと蛍と明夫はタクシーをおりた。 そして蛍と明夫は病室に向かった。 その頃、美佳はベットで栄養の病院食を食べていた。 『栄養食を食べてるから赤ちゃんにもいいわね』 美佳がお腹をさすったその時、ノック音がした。 『どうぞ』 美佳が返事をするとドアが開き蛍と明夫が入ってきた。 『言われた通り、明夫さんを連れてきたよ』 『飲み物を買ってきてくれるかな』 美佳は財布を蛍に持たせ買いに行かせた。 『……』 気まずい明夫はうつ向いた。 『椅子に座ってください』 『立ったままで大丈夫です』 『克巳のことなんですが』 『はい…』 『克巳と離婚します』 『……』 美佳の言葉に驚いた明夫は顔をあげ美佳に目を向けた。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加