未来から来た恋人と息子

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『お前達、いつから知ってたんだ』 『この店で働き始めた頃から、築いてました』 『嫌じゃなかったのか』 『別に俺は嫌じゃないですけど、皆もそうだよな』 ホストの言葉に他のホスト達は頷いた。 『皆、知ってたんなら隠す必要なかったな』 『そうだな』 晃は笑みを浮かべた。 『開店の準備をしてもいいですか』 『話は終わったから開店の準備をお願いします』 晃が言うとホスト達は準備を始めた。 『克巳、社長室に来てくれ』 準備に行こうとする克巳に雅が言った。 『はい』 克巳が返事をすると雅は社長室に向かった。 『……』 克巳はチラッと晃を見た。 『警戒しなくても大丈夫だと思うよ』 『……』 克巳は無言のままその場を離れ社長室に行き中に入った。 『話があるなら早く言ってください』 『……』 雅は無言のまま克巳に近づいた。 克巳はドキドキしながら雅に目を向けた。 『何もしないから心配するな』 『……』 『謝りたくてお前を呼んだんだ』 雅は土下座をして克巳を見つめた。 『……』 『嫌な思いをさせてすまなかった』 雅は土下座をしたまま頭を下げた。 『怒ってないから』 克巳は雅の身体を掴み立たせた。 『許してくれるのか?』 『あぁ、許す』 『……』 『話はそれだけなら仕事に戻るけど』 『未来から来た男とはどうなったんだ』 『夫婦になったんだ』 『え!…夫婦って…』 『美佳から聞いてくれ』 克巳は社長室を出ていった。 雅はソファーに座り携帯で美佳の携帯に電話をかけた。 『もしもし…』 『もしもし俺だ』 『どうしたの?』 『今、話して大丈夫か?』 『大丈夫よ』 『克巳のことなんだが』 『克巳がどうかしたの』 『…あの…その…』 『克巳と別れたわよ』 言いにくそうな雅に美佳が口を開いた。 『俺が見せた画像が原因か』 『克巳と明夫さんの本気を知ったから別れたのよ』 『克巳のこと恨んでないのか』 『別に恨んでないわよ、私の指輪を明夫さんに渡したのよ恨むわけないでしょ』 『そうか…』 笑う美佳に雅はホッとした。 『今、仕事中じゃないの?』 『克巳から別れたと聞いて…気になって…電話したんだ』 『…雅、仕事が休みの時、見舞いに来てね』 『あぁ、見舞いに行く…じゃあな…』 雅は電話を切った。
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