未来から来た恋人と息子

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雅は蛍と明夫に驚き椅子から立ち上がると克巳に目を向けた。 克巳は知らないという顔をした。 『何をしにこられたんでしょうか?』 雅が尋ねると蛍が口を開いた。 『明夫さんをここで働かせてもらえないでしょうか』 蛍の言葉に雅と克巳は驚いた。 『ホストの募集をしてないので…』 『蛍君、もういいから帰ろう』 『お願いします』 蛍は頭を下げた。 『わかりました、雇いますから頭をあげてください』 雅は蛍の身体を掴み頭をあげさせた。 『ありがとうございます…今からでも働けますか?』 『働けますよ』 『明夫さん、頑張って』 蛍は社長室を出ていった。 『無理を言ってすみません』 『気にしてませんから、大丈夫ですよ』 『……』 『克巳、後を頼むな』 雅はソファーに座り煙草を吸い始めた。 『行こうか』 『あぁ』 明夫は克巳と共に社長室を出て試着室に行った。 克巳はクローゼットからスーツとズボンを取りだし明夫に『はい』と言って差し出した。 スーツとズボンを受け取った明夫は着替えながら『俺がここで働いてやりにくくないか』と言った。 『そりゃあ、やりにくいけど…嬉しいかな』 『嬉しい?』 『明夫と一緒に仕事が出来るから』 克巳は明夫に近づき顔を見つめた。 『克巳』 明夫と克巳は抱き合いながら唇を重ねた。 その後、克巳と明夫は試着室を出ていった。 それから暫くして2人の女性が来店した。 『克巳さん』 克巳の姿を見つけた2人の女性は克巳の元に近づいた。 『いらっしゃいませ、由香さんと由美さん』 『こちら新人さん?』 『はい、明夫です』 『…私、明夫さんを指名するわ』 由美は明夫の腕を掴んだ。 明夫は驚きながら克巳を見た。 克巳は頑張れと頷いた。 『席に案内します』 『……』 由美は明夫の腕を掴んだまま空いている席に行きソファーに隣同士で座った。 『何か飲みますか?』 『明夫さんは何が好きですか?』 『俺はビールかな』 『ビール…すみません』 由美は立ち上がり男性を呼んだ。 男性が近づき『どうしましたか?』と言った。 『ビールありますか?』 『申し訳ありません、ビールはありません』 『じゃあ…赤ワインを…』 『かしこまりました』 男性はその場を離れ由美はソファーに座った。 それから暫くして男性が赤ワインとグラスを2個を持ってきた。
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