未来から来た恋人と息子

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『居なかったらどうする?』 歩きながら連れの男が言った。 『会えるまで近くで待っとく』 『わかった…』 『明夫さん、元気がないね』 『……』 『もしかして緊張してる?』 『蛍君…』 言いかけた明夫は歩く人物を見て足を止めた。 『明夫さん?』 蛍も足を止め明夫を見た。 『克巳…』 『え…』 蛍は明夫の目線の先を見た。 『父さんだ…明夫さん、行こう』 蛍は明夫の腕を掴み店の中に入っていく克巳を追いかけていった。 ーホストクラブー 『ここに入っていったよな』 『ホストクラブ…』 『何かご用ですか?』 『……』 声をかけられた蛍と明夫は同時に男を見た。 『あの…』 『篠原克巳さんに会いに来たんですが』 蛍の代わりに明夫が言った。 『克巳に…どうぞ』 ドアを開き中に入った男は開店準備をしているホスト達に声をかけた。 『克巳!お客さんだぞ』 『はい』 準備をしていた克巳は手を止め男に駆け寄った。 『お客さんだ』 男は離れていった。 克巳は姿を見せる蛍と明夫に目を向けた。 『どなたでしょうか?』 『大事な話があって会いに来ました』 『控え室に行きましょうか』 克巳は蛍と明夫を控え室に連れていった。 克巳は控え室のドアを開き『どうぞ』と言って蛍と明夫を先に入れると続けて克巳も入りドアを閉めた。 『座ってください』 『……』 蛍と明夫は無言のままソファーに座った。 『大事な話って何でしょうか』 克巳は向かい合ってソファーに座り蛍と明夫に目を向けた。 『信じて貰えないかもしれないけど、俺はあなたの息子、蛍です』 『…俺の息子?…ふざけないでください』 『母さんは22歳で俺を生みます』 『名前を教えてください』 『母さんは20歳であなたと結婚して篠原美佳になります』 『……』 蛍の言葉に克巳は驚き言葉を失った。 『驚くよな、未来から息子が会いに来たんだから』 『あぁ…』 『蛍君、本題を』 『忘れてた…父さん、母さんは俺を生んで病気で亡くなるんだ』 『美佳が…病気で…』 『父さん、俺達が来たのは…』 『帰ってください…美佳が死ぬ話しなんて聞きたくない』 克巳はソファーから立ち上がり控え室を出ていった。 『怒るよな…』 『蛍君、明日、会いに来よう』 明夫は蛍を立たせ控え室を出ると店を出ていった。
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