未来から来た恋人と息子

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突然の出来事に明夫は立ち尽くした。 『明夫』 『…はい…』 振り返った明夫は克巳に目を向けた。 『克巳…』 『仕事が終わったら廃墟ビルに帰るんだろ』 『あぁ…』 『美佳が出産するまで俺の家で寝泊まりをすれば』 『いいのか?』 『美佳には俺から言っとくから』 克巳は店の中に入っていった。 『さっきのを見て怒ってるんじゃ』 明夫も店の中に入り夜の11時まで働いた。 ー閉店時間、11時ー 『お疲れさまでした』 ホスト達は試着室に戻り衣服に着替えると店を出ていった。 『……』 克巳と片付けをしている明夫は克巳のことが気になっていた。 その時、雅と晃が現れた。 『俺達は先に帰るから、片付けが終わったら帰れよ』 『明夫さん、鍵をかけたら裏口に置いてあるポストに入れといてください』 晃は店の鍵を明夫に差し出した。 『わかりました』 明夫は鍵を受け取った。 『お疲れさま』 『お疲れさまでした』 『お疲れ』 明夫と克巳は店を出ていく雅と晃に同時に言った。 『さっさと片付けて帰るぞ』 機嫌が悪い克巳の姿を見て明夫は口を開いた。 『由香さんが俺にしたことを見たんだろ、だから機嫌が悪いんだろ』 『……』 克巳は片付けを続けた。 答えない克巳にイラッとした明夫は克巳に近づき肩を掴むと振り向かせた。 その時、明夫は涙を流している克巳に驚いた。 『克巳…』 『何だよ』 手で涙を拭いながら克巳は背を向けた。 明夫は克巳を背後から抱き締めた。 『片付けはまだ終わってないんだ…離れろよ』 『ヤキモチを妬く克巳、可愛い』 『…可愛いって…何だよ』 克巳は抱き締める明夫の手に触れた。 『キスをされたからといって由香さんを好きになんてならない…だって俺が好きなのはお前だ、克巳』 明夫は克巳を振り向かせ顔を見つめた。 『情けないよな、男の癖にヤキモチを妬くなんて』 『俺は嬉しいけどな』 『何を言ってんだ』 克巳は頬を赤らめた。 『照れてる姿も可愛い』 『バカなことを言ってないで片付けるぞ』 『克巳』 明夫は離れようとする克巳の肩を掴み振り向かせると唇を重ねた。 『んん…』 舌を絡ませながら口づけをする明夫のキスに感じた克巳は明夫の両腕を掴んだ。
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