未来から来た恋人と息子

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ー産婦人科、ナースステーションー 『すみません、吉野先生は…』 『今、吉野先生は診察に行かれてるので、少しの間、お待ちください』 『わかりました…座って待ってようか』 『はい』 明夫と克巳と晃はナースステーションの近くの椅子に近づき座った。 30分後、看護婦が近づいてきた。 『診察が終わったので吉野先生の元に案内します』 看護婦は克巳と明夫と晃を吉野先生がいる相談室に連れていった。 ー相談室ー 看護婦はドアをノックした。 『どうぞ』 中から吉野先生が返事をすると看護婦はドアを開き克巳と明夫と晃を中に入れると看護婦も中に入りドアを閉めた。 克巳と明夫と晃は隣同士で椅子に座った。 『なぜ、亡くなったんですか?』 明夫が尋ねると吉野先生が口を開いた。 『解剖して見てみないと何が原因で亡くなったのかわかりません』 『解剖ですか…どうする?』 明夫が克巳に問いかけたその時、克巳が口を開いた。 『先生、赤ちゃんは?』 『赤ちゃんは…ダメでした…』 『そんな…』 克巳は悲しげな顔でうつ向いた。 『どうしますか?』 『原因が知りたいので解剖をお願いします』 『わかりました』 『待合室に案内しますね』 看護婦はドアを開き克巳と明夫と晃を出すとドアを閉め待合室に連れていった。 ー待合室ー 『解剖が終わったら先生が来ますので少しの間、お待ちください』 『わかりました』 明夫が返事をすると看護婦は頭を下げ待合室を出ていった。 『何か飲み物でも買ってこようか』 『俺はいらない』 克巳は椅子に座った。 『電話をしてくるから…』 『はい』 『……』 明夫が返事をすると晃は待合室を出ていった。 明夫は克巳の隣に座り克巳の手に触れた。 『明夫、蛍に知らせなくていいのか』 『たぶん知ってるんじゃないのかな』 『驚いただろうな…』 『そうだね』 『俺も驚いたよ、急に美佳が死ぬなんて…』 克巳は目から涙を流した。 明夫は無言のまま克巳を抱き締めた。 『……』 克巳は必死に涙を堪えようとした。 『今は泣いてもいいんだ、我慢なんてするな』 『あああ…』 明夫の言葉で克巳は声を出しながら泣いた。 明夫は落ち着くまで克巳を優しく抱き締めた。 その時、ドアが開き現れた晃は静かにドアを閉めその場を離れていった。
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