未来から来た恋人と息子

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『美佳に会わないか?』 『……』 『息子のお前が参れば美佳も喜ぶぞ』 『…母さんはどこに?』 『こっちだ』 克巳は蛍をリビングに連れていった。 そして蛍は美佳の写真と遺骨の前に近づき正座で座ると線香を立て参った。 『……』 『……』 克巳は蛍に近づき正座で座ると美佳に目を向けた。 『息子に参ってもらって美佳は喜んでるだろ』 『母さん、悔しいだろうな』 美佳の写真を見つめながら蛍が言った。 『未来の息子、蛍が生まれてくるはずだった蛍の代わりに生きなきゃな』 『……』 頷く蛍の目に涙が流れた。 克巳は黙って蛍を抱き締めた。 『父さんって呼んでいいですか?』 『いいに決まってるだろ』 克巳は手で蛍の涙を拭いながら優しく微笑んだ。 『父さん』 蛍は克巳に抱きつき声を出しながら泣いた。 『蛍』 克巳は蛍を落ち着くまで優しく抱き締めた。 それから暫くして落ち着き泣き止んだ蛍は克巳から離れ『明夫さんと幸せになってください』と言った。 克巳は『幸せになります』と答えた。 『じゃあ…未来に帰ります…明夫さんは廃墟ビルにいるので迎えに行ってあげてください』 蛍はリビングを出て玄関に行くと靴をはき出て行った。 その後、克巳は家を出て廃墟ビルに向かった。 その頃、明夫は部屋の窓から空を眺めていた。 『克巳と蛍君、うまくやれてるかな』 明夫が口にしたその時、克巳が現れた。 『明夫』 『克巳…』 突然の克巳の訪問に明夫は驚いた。 『帰るぞ』 『どうしてここに…蛍君は?』 『蛍は未来に帰ったよ』 『そうか…』 『最初は美佳の死に悲しんだけど、最後は明夫と幸せになってくれと言って帰っていったよ』 『蛍君がそんなことを』 『明夫』 明夫の手を握りながら顔を見つめた克巳は真剣な顔で口を開いた。 『美佳と蛍のために幸せにならないとな』 『そうだな』 見つめ合うと克巳と明夫は口づけを交わした。 その後、家に戻った克巳と明夫は寝室のベットで全裸になり身体を重ねた。 『ああ…』 『克巳、愛してる』 『俺も愛してる』 克巳と明夫は激しく身体を重ねその後、寄り添いながら眠りについた。 ー雅の家、寝室ー 晃はパジャマ姿で雅に寄り添いながら眠っていた。
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