叶わない我儘

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「こんな足でここまで来たくらいだから、切羽詰まってたのはわかります。 けど……社会人なら公私はわきまえるべきですよ。 宮坂さんを頼って会社までくるのは、やりすぎです」 低い彼女の声は、存外によく通った。 だから目の前にいる美月にはもちろん、少し離れた浩二も息を詰める。 美月は瑞希の腕にしがみついたまま、すぐに謝った。 「ごめんなさい。本当にごめんなさい。 私気が動転してて、健吾くんの手紙に浩二くんのところに行けって書いてあったから、ここしかないって思って……」 「……え?」 じっと美月を見ていた瑞希は、そこで表情を変えた。 「……それって、どういう……」 「わからないけど、浩二くんに事情を全部話して、あいつのとこに行けって……」 美月は思い出したのか、目尻に涙を溜める。 その様子を眺めていた瑞希は、やがて「そうですか」と目を伏した。
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