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目を合わせた途端、浩二ははっとした。
数日前に美月の件で不安にさせたばかりなのに、これ以上彼女にこんな顔をさせるわけにはいかない。
「美月、とりあえず場所を移そう。
ここでする話じゃない」
浩二は視線を彷徨わせた。
けれどタクシーは見当たらず、大通りに出るしかない。
それは美月もわかったようで、頷いて前に踏み出した。
けれど足が痛いのか、数歩歩いたところで思い切りよろめく。
(えっ)
浩二が咄嗟に手を差し出した時、隣にいた瑞希が彼女の腕を掴んだ。
「……大丈夫ですか。
事故の時の捻挫、ひどいんですね」
瑞希は美月の右足に視線を落とす。
肌色の湿布は、前に健吾のプレゼントを探した時に買ったものだ。
「ごめんなさい、ありがとう」
驚きつつも礼を言った美月を、瑞希は感情を押さえた目で見返した。
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