叶わない我儘

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視線の中心にいたのはミヤサカだった。 彼は色めきだつ客たちを気にする様子もなく、店内を見渡す。 やがて瑞希と目が合うと、彼はふっと表情を緩めてカウンターへと歩き出した。 わき目もふらないその様子は、彼とハチ公前で初めて会った時を思い出させる。 同時に瑞希の中から熱いものがせりあがった。 (あの時……) あの時も、ミヤサカは瑞希だけを見つめて近付いてきた、 だけど本当は、その向こうに違うだれかを重ねていたんだろうか。 「ごめんね、待たせて」 申し訳なさそうに眉を下げる彼に、瑞希は力なく笑う。 「いいえ、こちらこそ無理言ってごめんなさい。 お仕事大丈夫だったんですか」 「なんとか終わらせてきた。それより……」 そこで言葉を切ったミヤサカは、心配そうに瑞希の目を覗き込む。 「なにかあったんでしょ。そっちこそ大丈夫?」
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