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そこまで広くはない部屋にひとり、というのがまだ救い。と思い、今はまだ朝のようで、明るいからそこまで怖くはない。広い場所に1人よりは、狭い場所にひとりのほうが落ち着く海優は、出来る限り冷静になり、また状況分析を始めた。勿論、顔は痛いが無視したまま。
「(…少し前に読んだ小説と、今の僕の状況は酷似している。つまり、異世界…でも、これは現実的じゃない。それなら、お父さんに寝てる間に何処か海外に売られたとか、もしくは誰かに攫われた、という方がまだ現実的…な気がする)」
日本では、人身売買も立派に非現実だが、海優は父親に売られるということは常識の範囲内にあるらしい。明らかに異常な考えだが、ツッコミを入れるものはいない。
「(結論、ここは何処かの国…それか、もしかしたら異世界…)」
もし異世界なら、ということは頭の片隅に。何故なら、異世界というものに強い憧れを抱いている海優には、それは夢物語だと断定。そして、売られたもしくは攫われたの線が強いと判断した海優はそう結論づけた。
「(見た感じ牢屋…だよね、ここ。さっきのおじさんは、仕事をさせる。と言っていた…ということは、僕は寝た後、何処かに連れ去られ、何日か意識の朦朧としたまま仕事というのをしていたのかも知れない。)」
でないと、もともと細かったにしろ、明らかに前よりも細くなった腕は説明がつかない。記憶が飛んでいる、ということはほぼほぼいい線行っているかも知れないと海優はそう考えた。
「(もしかして…ここ、外に出ることとか出来ないのかな?)」
外に行ってもすることはない。けど、売られる前はそれなりに友達もいたし、幼なじみだって居た。決して父親の元に帰りたい訳ではないが、お母さんにだって会いたい。そう思った海優は、とにかく脱出することを考えた。
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