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玄関に走りこむと、上がり框(かまち)にどてっと倒れこむ。
「いたっ」
見ると、さっき転んだ時にできたのか、膝に大きな擦り傷があった。
今頃になって、じくじくと痛む。
「……痛いよぉ」
壁につるしてある木彫り細工の飾りのついた古い鏡に、情けない顔をした私が映る。
ぶっといお下げ。
メガネとぷくぷくのほっぺたに埋もれた目。
全然、可愛くない。
「おや、早百合。
おかえり、どうしたの、そんな所で」
台所からお祖母ちゃんがひょこっと顔を出した。
パタパタとスリッパの音をさせながら、私に近寄る。
「お買い物、ご苦労様。
おイモ、買えた?」
そののんびりした口調が、私にはひどく能天気に聞こえた。
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