お祖母ちゃんの視点

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確かに、早百合は昔から、シルバー世代にはうけがいいんですよねえ。 だけど、もてるのが60歳以上限定だと、将来に差し障りが出てくるでしょうし。 連れてきた恋人が私たちと同世代で、実は老人会で一緒でした、なんてシャレになりませんよ。 ところで、先日、久し振りに息子が帰国してきました。 我が息子ながら、相変わらずの美男子で。 ああでも、若い頃の夫にはかないませんけどね。 「お母さん、早百合はどうしたんだい?」 朝から庭で不思議な動きをしている早百合を見て、直哉は目を丸くしています。 本人は軽快に動いているつもりなんですが、はた目には必死さが痛いくらいです。 無言で、伸ばした腕を前方から上に伸ばし、横から下ろす。 それに2回繰り返した後、お腹の前で交差した腕を横に開くと同時に膝を外向きに曲げて、再び前に戻ってきた腕と同時に、膝も閉じて伸ばす。 「ああ、ラジオ体操第1よ」 早百合の体重では、家の中でやると床が響くので嫌なのだそうです。 かと言って、庭でやると、ラジオの声が外に漏れて、”ああ、吉水さんちの早百合ちゃん、やっとダイエットする気になったのね”と噂されるのが嫌なので、音楽なしでやっているというわけです。
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