瀬をはやみ

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どこにですか?などと、定番のおとぼけをかますつもりはなく。 「自棄(やけ)を起こしちゃいけませんよ」 私は、真剣に丸君を諭した。 きっと、最近つらいことがあったんだ。 だから、この憂さ晴らしをしたくて、明らかに男っ気も色気もない私に声をかけたに違いない。 「人間、生きていたらいい事もあります。 七転び八起き。 塞翁が馬(さいおうがうま)、ですよ」 最近読みだした故事成語事典が面白くて、ついつい使ってしまう。 「さ、西郷ガンマ? 何の事かわからないけど、僕、世界史のクラスで一緒だから、最近、吉水さんがすごく可愛くなったから、付き合いたいって思って」 丸君(しつこいけど、丸山君です)は、あまり国語が得意ではないらしい。 悪いけど、脈絡がなさすぎて、何が言いたいのかわからない。 「すみませんが、お弁当を食べかけていますので、これにて」 私はペコッと頭を下げると、その場を立ち去った。 よく知らない人について行ったら、危ないしね。
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