瀬をはやみ

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ああ、このシチュエーション、大誠さんとの出会いの時と同じだな。 色々かぶっているので、懐かしくてついぼんやりとしていたら、すっと本を差し出される。 「あ、ありがとうございます」 と受け取ろうとしたけれど、なぜか固い。 彼がしっかりと握っているからだ。 え?まさかこの本が欲しいとか? ダメだよ、私が買うんだから! 私も意地になって引っ張る。 にこやかなイケメン男子と真剣な普通女子の綱引きは、あっさりと決着した。 「はい、どうぞ」 いきなりぱっと離されて、勢いがついた私は、後ろによろける。 それをぐいと腕を引いて止めてくれたのも、イケメン男子。 何なの、この人。 非常に不愉快になった私は、ぺこっとお辞儀だけして、踵を返そうとした。 「あれ、それだけ?」
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