瀬をはやみ

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「鈴宮海斗さん、でしたっけ? あなたが私を知らないように、私もあなたを存じ上げないんですよ。 ですから、これで失礼します」 固まっているらしい彼をほうっておいて、私はさっさとレジに向かった。 「……嘘だろ、俺を知らないなんて」 と背後でブツブツ言っているけれど、知るかっ。 どんだけ、自意識過剰なんだよ。 大誠さんは、優しく微笑んでくれたのに。 もう一年以上も前の事を思い出して、私はちょっと胸が痛かった。 翌日。 登校した途端、私は昇降口で見知らぬ女子につかまった。 「すみません、昨日、駅前の本屋で〇〇ってコミックを買いましたか?」 何だ、その妙に具体的な質問。 「はあ、買いましたけど」 と、私が頷くと、とたんにぐいっと腕をつかまれる。 そして 「見つけました!」 と携帯に向かって叫んでいる。
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