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指輪を見つめながら、私は満面の笑みで答える。
「だって、大誠さん以外の人となんて、考えられないですし」
「……こんな渡し方でも?」
確かに、今日は普通の日で、私たちは仕事上がりで、指輪の箱はコンビニのアイスと一緒に渡されるし、ロマンチックなプロポーズの言葉もない。
「だって、今日が新しい記念日になるでしょう?
普通の日が特別になったんだから、嬉しいです。
それに……」
大誠さんが、実はすごく照れ屋だってことも、私の事をすごく想ってくれていることも、ちゃんと知っているから。
「また、アイスもなか、買って下さいね」
「俺の奥さんは、欲がないな」
私たちはどちらからともなく手をつなぐと、家に帰る道をたどった。
アイスは、私たちの間で静かに溶けていった。
終わり
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