花の色は

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遺伝子には、優性と劣性があると、理科で習った。 それなら、どうしてお父さんの遺伝子は優性じゃなかったんだろうと、恨んでしまう。 柔らかく波打つ髪、涼しげな目元はしっかりと二重瞼で。 すっと通った高い鼻に、薄い唇。 誰もがうらやむ、美形の父親を持った娘は。 箒のようなおさげをほどくと、これでもかってくらいの太い直毛。 良く言えばマシュマロ、普通に言えば大福餅のようなほっぺたに埋もれた目は、厚いメガネのレンズに隠れている。 誰も、お父さんと私を実の親子だなんて見ない。 養女疑惑ならまだいい方だ。 ひどい時なんて、お母さんの不倫疑惑まであったんだから。 そんな時、おばあちゃんがよく言ってくれた。 「早百合(さゆり)は、手の形がお父さんにそっくりだよ」 確かに、女の子にしては大き目の手は、指も爪の形も、お父さんに似ていると思えた。 わずかな慰めにしかならなくても、一つでも共通点があることは、嬉しかったんだ。
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