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なんちゃら海斗は、私の手を握りしめて、ニコニコして言う。
「君の名前がわからなかったから、友達に頼んで、朝から全部の昇降口と教室を張っていたんだ」
さらっと言ってるけど、人海戦術ですか?
その友達とやらの、私を確保した女子は、うっとりとした顔で彼を見たかと思うと、般若の形相で私を睨みつける。
「あのー、そろそろ教室に行きたいんですけど」
「うん、じゃあ行こうか。
何組?」
「いえ、そうじゃなくて、手を離していただきたいと」
私は、固く握りしめられたままの手を振ってみせた。
さっきから、確保女子の視線が痛いこと痛いこと。
「ダメだよ。
離したら逃げるでしょ?
それより、名前教えて?
俺の名前は知ってるでしょ?」
「はあ、吉水と申しますが」
「だーめ、下の名前も!」
と、上目遣いで可愛くおねだりしてくるなんちゃら海斗。
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