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これみよがしに、前髪をかきあげながら、教室の入り口にもたれているのは、さっき降り切ったはずの鈴宮。
「ふーん、客寄せパンダみたいですね」
氷点下の声で言うと、私はさっさと、英単語帳を広げた。
受験生は忙しいのだ。
私は、このあたりではトップクラスのK大学を志望しているんだ。
もちろん、大誠さんに近づくため!
彼が中国語を話すなら、私だってニイハオの国に行くんだから。
「今日から、昼休みには迎えに来てやるからな」
まだ鈴宮が何か言っている。
「何で?」
「もちろん、一緒にランチタイムを過ごすためさ!」
「ことみと食べるから、来なくていいです」
「えー、行ってきなよ、早百合」
ことみが残念そうに首を振る。
聞こえないふりをする私。
英単語に目を落としていたせいで、鈴宮がことみの耳元で何やら囁いていたことには気づかなかったのだった。
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