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あっけなく鈴宮の口に飲みこまれていった卵焼きを、私は怒りと切なさで見送った。
くそ、二つしかなかったのに!
これ以上おかずを奪われるわけにはいかず、私は蓋で防御しながら、咀嚼もそこそこにお弁当を完食する。
ほとんど丸飲みだよ。
「ちぇー、”はい、あーん”ってやりたかったのに」
「一人でやってください」
「私がやってあげようか、鈴宮君!
はい、あーん」
鼻息荒く食いつくことみに、鈴宮は顔を引きつらせて、丁重に断る。
「いえ、遠慮しておきます」
老いも若きも問わず、イケメン好きのことみは、自ら網に飛び込んできた生け贄が、すっかりお気に入りの様子。
頼むから、私を巻き込まないでほしい。
食べ終わった私は、さっさと立ち上がる。
「あ、さゆりん、どこに行くのさ?」
は?誰がさゆりんだ!?
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