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でも、時々、ふと思ってしまうんだ。
このまま、大誠さんに会えなかったらどうなるんだろう。
私が頑張っていい女になっても、振り向いてもらえなかったらどうしよう。
ネガティブになってしまうたびに、あの日の大誠さんの笑顔を思い出す。
そして、彼女さんに向けていた優しい顔も。
大丈夫だ。
少なくとも、冷たくされることはないはずだから。
自分に言い聞かせて、私は手洗い場の鏡に映る自分を見つめる。
顔の輪郭がしまってきたからか、前よりもはっきりとしてきた目元。
おやつを減らしたおかげで、吹き出物もなくなって、すべすべになってきた。
うん、昨日よりも前進前進。
ポジティブに切り替えてトイレを出たとたん、私は脱力しそうになる。
向かい側の壁にもたれて、斜め45度の角度から、キラースマイルだと本人が思っているであろう笑顔で、私を待ち構えている鈴宮がいたから。
「遅いよ、子猫ちゃん」
……誰か、こいつにまっとうな人生を歩ませてやってください。
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