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私は語気鋭く、鈴宮の口説き文句を切り捨てた。
それでもめげないポジティブ男は、ニコニコしながら、私の頭を撫でる。
「うん、怒った顔も可愛いんだけど、俺としてはチューを迫る顔の方がいいなあ。
年上の彼女の可愛いおねだり、とかさ」
私は無言で、古文のテキストに載っている清少納言の絵を、チュー待ち顔に押しあててやった。
「げ、年上過ぎんだろ!?」
そんなこんなで、何とか今日の分を終わらせた頃には、私はぐったり疲れていた。
「じゃあね、しっかり復習しときなさいよ」
「えー、ご飯食べてかないの?」
こてんと首を傾けて、上目遣いでおねだりしてくる鈴宮。
確かに可愛いのかもしれないけれど、私は男にかわいさは求めていない。
「帰る」
「ちぇー、俺の得意技もきかないか」
こいつは確信犯で、自分の美点を使いこなしてくるけれど、それを隠しもしないから、憎めないのかもしれない。
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