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でも、私は彼の優しい笑顔を知っている。
恋に落ちるには、それで十分だったんだ。
他の事はこれから知っていけばいい。
人を好きになるのに、生年月日や血液型は、重要じゃないんだ。
鈴宮はじっと、そんな私を見ていた。
いつもとは違って、真っ直ぐ心に食い込むような強いまなざしで。
こいつ、こんな表情もするんだ。
ちょっとだけ、本当にちょっとだけ、ドキッとしたけど、私はそれを振り払って、バッグを持ち上げた。
「じゃあね、しっかり勉強しなさいよ、後輩」
「へーい」
彼はすぐにいつもの不遜な態度に戻って、返事をする。
その距離感にホッとしながら、私は帰った。
あき姉が、結婚することになったと報告を受けたのは、それからしばらくした夏の初めの事だった
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