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初めてアイツを見た時、胸の奥が震えた。
あたしたちを蔑んだ目で見る黒い瞳。
女みたいに細い身体に、艶のある黒く長い髪。
そして、あたしたちには無い黒い翼――
人々が遠巻きに彼を見るなか、あたしは躊躇う事なく、ソイツに近づいていった。
眼前まで迫り、黒い瞳を真っ直ぐ見据える。
「あんた、強いでしょ。あたしと戦ってよ!!」
周囲が騒然とする。
だけど、そんなのお構いなしだ。
興奮を隠しきれない、あたしの獣の尻尾が揺れ、獣の耳が跳ねる。
「…………死にたいのか?」
ソイツは、低く冷たい声で言い放つ。
全身に痺れるような感覚が走り、一際大きく尻尾が揺れる。
「それって、あたしと戦ってくれるってこと?」
「……物好きな女だな」
蔑んだ表情を変える事なく、ソイツは剣を手に取った。
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