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悲しそうな、苦しそうな、そんな顔を見た瞬間、自分の胸が痛んだ。 そんな顔するくらいなら二人の間に割って入って奏音と一緒に行動したらいいのに。 体が大きいだけで意気地なしなの? しかも、なんだか目の前の二人の雰囲気があまりにも良くて奏音が好きなのは秀君なのかもしれない、なんて勘違いしそう。 「奏音」 二人の雰囲気を壊したくて少しだけ大きな声を出すと奏音が笑顔で『熱帯魚、可愛い』と水槽を指差した。 ああ、もうそんな奏音が可愛い。 「羽音はクラゲ見てきた?」 「ううん。まだ。奏音と一緒に行こうかなって思って」 「そうなんだ」 少しだけ。ほんの少しだけ困った顔をした奏音。 「クラゲ好きならそう言えよ」 「え?あ、さっき?でも熱帯魚も好きだし」 滝川琉生が非難めいた声で私に言ってくるから慌てる。 何のためにここに来たと思ってんのよ! あんたの為に来たのに! 「クラゲんとこ行くぞ」 「ちょっと待って。まだ私見てない」 熱帯魚コーナーを全部みてないのに何故か滝川琉生に腕を取られる。 いやいや。ここでまた離れる訳にいかないの! 「秀君!秀君と見たいかなぁ・・・なんて」 思わずそんな事を口走ると、滝川琉生の顔色が変わった。 ついでに奏音も『え?』なんて大声出すし。 急に二人っきりになる事に動揺させてしまったみたいだ。 「あ、いや。その秀君もクラゲ好きそうだなってその勝手な思い込みで」 「そんな事ないよ。クラゲ綺麗だもんね。 それじゃ、クラゲ見に行く?」 秀君がニッコリ笑う。 ああ、ほらこんなに優しい。 奏音もやっぱりこういう人を好きになった方が・・いやいや。人を好きになるのに理由なんてないもんね。 奏音が滝川琉生が好きならちゃんと応援するのが姉の私の仕事だもん。 結局、4人でクラゲのコーナーに行くことに。 完全に真っ暗な部屋。 自家発電みたいに発行するクラゲ。 ゆらゆらと気持ちよさそう。 何を考えてるんだろう。こんな風に優雅に出来たらいいのに。 水槽に手を添える。 どれくらいそうしていたのか分からない。 「本当に好きなんだな」 滝川琉生の声に現実に戻ってきた。 「ごめん。なんか一人浸ってた?」 辺りを見渡すと二人が居ない。 だからどうして奏音は秀君とばっかり行動するかな。 てかあんたも奏音が好きならもう少し行動しろ!
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