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「奏音たちは?」
「ペンギン見に行った」
滝川琉生とペンギンと言う単語が似合わなくて思わず笑ってしまう。
「なんだよ」
「ごめん。ペンギンとか似合わないなぁって」
「悪かったな。自分でも思うけどこれは仕方ないだろう」
「そうだね。仕方ないね。ってか見に行くなら声かけてくれたら良かったのに」
「必死にクラゲ見てるからだろ?何回か声かけても気付かないから先に行くってさ」
「付き合わせちゃったね。連絡くれたら後からペンギンの所行ったのに」
「変な奴居たら困るだろ」
変な奴?
「あはは。私に声かける人なんて居ないって」
思わず笑う。
奏音みたいに可愛かったら心配で一人にさせて置けないけど、私なら全然平気なのに。
「さ、行こうか。ペンギン。可愛いよね。あのペタペタ歩く姿」
クラゲコーナーを出た瞬間、外の眩しさにクラっとすると滝川琉生が私の肩を支えてくれた。
「ごめん・・ありがとう・・・」
自分よりも背が高い、逞しい。男の人なんだって思った瞬間胸が変な感じになる。
男慣れしてないってこういう時にどうしていいか分かんない。
奏音なら可愛く『ありがとう』って言えるんだろうけど、私にはその可愛さないしな・・・って別に滝川琉生も私なんてなんとも思ってないだろうから別に良いんだろうけど。
「ぼーっとしてっと置いてくぞ」
歩き始めた滝川琉生の後を追う。
ホント。背、高いなぁ。体格も良いし。部活とか何やってたんだろう。
「羽音!」
ペンギン部屋の水槽にかぶりつくようにしていた奏音が私を見つけて笑顔で手を振る。
ああ、もうこの瞬間の優越感。あんなに可愛い子が私の名前を呼んで手を振ってくれるんだよ?
最高に幸せ。
「教えてくれたら良かったのに」
「だって。羽音クラゲ大好きだから。それに滝川君が付いててくれたら変な人に声かけられないから安心だし」
「奏音じゃないんだからこんな大女に声かける人なんて居ないってば。
それよりペンギンは?」
「さっきまで居たんだけど、みんな部屋の中に入ってっちゃった」
「ホント?残念、見たかったのに」
「最後にもう一回来ようよ。もうすぐイルカのショー始まるって」
奏音の目がキラキラしてる。
こんなに水族館楽しみにしてたなんて。
「あ、ねぇ君雑誌に出てた子じゃない?」
野太い声がして振り向くと男性二人が居た。
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