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写真を撮りたいと言う彼達に難色を示す奏音。
そりゃそうだ。こんな下心丸見えの顔で写真なんて撮らせたら何に使われるか分かったもんじゃない。
「すみません。彼女もうそういうのしてませんから」
秀君が奏音と男たちの間に割り込む。
ちょっと!滝川琉生。ここで男見せないと!
「そんな事言わないでさ。一枚くらいいいじゃん」
奏音が一歩下がる。
私は急いで奏音の手を握っていつでも逃げる事が出来るように準備する。
怯える奏音の顔。
「ほんと、可愛いよね。一枚でいいからさ、ね」
「しつこいのは嫌われますよ」
秀君が一歩前に出る。
「しつこいって。ただ写真撮らせてくれって言ってるだけじゃんか。
なんだよ。ちょっと雑誌に載ったからっていい気になってんじゃねーよ」
「あの・・秀君。いいよ。写真だけなら」
「何言ってんの!あんな顔して絶対奏音の写真変な事に使うに決まってんだから」
思わず本音が口から漏れ出てしまう。
シマッタ!と思った時には男たちが逆上していた。
「何だよブス!お前の写真撮ろうって言ってねーし。だいたいでかいくせにヒールとか穿いてんなよな」
「馬鹿かお前ら」
ちょーーーー!滝川琉生がぽつりとつぶやいた一言がさらに逆上させる。
「琉!」
秀君が滝川琉生を窘めるように名前を呼んだ。
「ったく、胸糞わりーー。行こうぜ」
何だよ。ちょっと可愛いからって何様かっての。なんて言いながら去っていく二人組。
いーーーーーだ!と表情を作って二人の背中に向ける。
「羽音。痛い」
思わず力が入りすぎて奏音の手を握りすぎたみたい。
「ごめん。大丈夫?」
真っ青な奏音。
「なんなんだあいつら。あんなの全く気にしなくていいからね。
あんなの絶対あいつらの方が悪いんだから」
「琉があんな事言わなかったらもう少し穏便に居なくなったかもしれないのに」
「悪い」
「でもまぁ僕も馬鹿かっては思ったけどさ。いざとなったら投げ飛ばせばいいだけだし」
そっか。
滝川琉生は柔道やってたんだよね。
それなら奏音を任せても安心だ。
私が守ってやんなくても・・・奏音には素敵な人がこれから先沢山現れる。
少しだけ見上げた先にある横顔。
奏音を守ってくれるであろう人を見つめ少しだけ悲しくなる。
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