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自宅の近くに塾がなかった事と、みんなの口コミで駅前にある進学塾に通う事になった奏音。 不得意科目の英語を中心に通う日を決めたみたいで、月・木・金の週三回。 帰りは遅くなるから父親か母親かどちらかが迎えに。 二人とも無理な時は私が迎えに行く事にしている。 私は部活も終わったし、学校以外で勉強するなんて考えただけでもおぞましいから一緒に行こうと言われたが断った。 心配なら付いていけばいいんだろうけど、就職と大学になればそうそう付いて回る事も出来ないから今は予行練習のつもりで奏音から離れている。 これが結構苦痛。 帰ってきて奏音の笑顔がないとやっぱり寂しいものがある。 ちなみに今日は私が奏音を迎えに行く日。 バスに乗って塾の前に着いたのが21時半を少し過ぎた位。 塾が入ったビルから学生が次々に降りてくるのをガードレールに座って見ていると奏音の姿が見えた。 男子と話しながら降りてくる。 あの制服は県内でも有数の進学校の制服だ。 奏音が隣の男子と話した後、後ろを振り返ってそこに居た男子とも何か話している。 とりあえず 「奏音!」 名前を呼びながら奏音の元へ走る。 階段を下り終えたことを確認してから腕を掴んで自分の背中側に奏音を隠す。 「羽音!?」 奏音がビックリした声を出す。 私は威嚇するように二人を睨みつけてから『帰ろう、奏音』と振り向いて奏音を見た。 「う、うん。 じゃあ、またね。滝川君」 奏音が手を振ると後ろの男が軽く手を挙げた。 私は二人を無視して奏音の背中を押すように歩き出す。 「どうしたの?羽音」 戸惑いを隠せない奏音に『お腹空いちゃって早く帰ろう』と言い訳する。 奏音の顔は見れないまま。 なぜ。 別に男子が害虫だからと言って喋るくらいは平気だったのに。 なんとなく彼はダメだと思った・・・彼?彼って? 顔もろくに見てないし覚えても居ないのに頭の中で警笛が鳴る。 あの男と奏音を近づけちゃいけないって。 走った後のように心臓が早鐘を打っていた。
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