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「触んないで!」 「てーな!ブスが!オメーに言ってねーだろうが」 腕を叩かれた男が切れて私に食って掛かる。 とりあえず奏音を守んなきゃ。 「奏音、走って!」 「でも」 「いいから!」 奏音の背中を押して先に行かせると『待ってよ』ともう一人の男が奏音の前に立ちはだかる。 塾からは次々に学生が降りて来るけれど、誰も何もせずただ遠巻きに見てるだけだった。 「ご飯だけだってば」 酔っ払いが!奏音に触るな! 奏音を助けなきゃ!そう思うのにもう一人の男が邪魔で奏音の所まで行けない。 「オッサン、迷惑」 「滝川君!」 「だいたいこんな往来で見っともないよ。ほら通行人が沢山あなた達の醜態見てる」 いつも二人なのかもう一人の男の子が冷静な口調で言うとサラリーマンも辺りを見回して『行くぞ』とその場を離れて行った。 「ありがとう・・・ございます・・・」 とりあえず助けてもらってお礼を言う。 「あんなヒステリックに叫ばれたらあっちだってカッとなるに決まってんじゃん。アンタ馬鹿なの」 『どういたしまして』なんて返事が返ってくると思ってたのに実際は『馬鹿なの』と鼻で笑われた。 「はぁ?何その言い方」 「何?実際そうだろ。あんな態度とんなきゃオッサンだってムキになんなかっただろーし」 「そりゃあすみませんでしたね。だいたいそっから見てたんならもっと早く助けてくれてよかったんじゃないの?」 「なんで知らねー女助けねーとなんねーんだよ」 「女の人を助けるのは当たり前じゃないの?」 「何言ってんだお前」 「お前って気安く言わないでよ」 「名前しらねーんだからお前でいいだろうが」 「はぁ!何あんた!」 「ちょっと羽音!」 「琉生!」 奏音ともう一人の男の子が止めに入る。 最低。コイツ最低。 奏音を助けたかなんだが知らないけど本当に最低。 「奏音、行こう」 「助けてくれてありがとう。またね、滝川君」 そんな奴にお礼なんて言わなくていい! 「待って、羽音」 奏音を置いてさっさと歩き出した。
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