第2章

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俺は濡れた頬の感覚に目が覚めた。 何か悲しいことがあった。決して雨の滴ではない。 ボンヤリ空中に目を泳がせる。 もう一着のバスは通り過ぎているだろう。 青々とした空に太陽の光が眩しく照っていた。 腕時計を見る。7時42分だ。 あの人は何を叫び、何故俺が泣かなくてはいけなかったのか模索しながら、青いアゲハ蝶を探した。 直感的に分かった。もう青いアゲハ蝶はいない。だから、泣いたのか?あの人が哀れで泣いたのか?そもそも人を哀れむ立場に俺が立てるのか? 怖かった。 殺気立った人の気配程、恐れるに足るものはない。だからと言って、怖くて泣くようなセンチメンタルな男として生きてきた覚えは無かった。 バス停の予定時刻を再びチェックする。この調子だと歩いて帰る方が楽そうだ。 ここら辺の獣道はよく知っている。 子供の頃、自分で近道を築き上げて来た。簡単な動作だ。木々の邪魔な小枝を庭バサミで切り取り、雑草を手袋した手で引き抜いて、毎日、1歩ずつ進める。それだけで俺専用の近道ができた。3年はかかったが、周りに内緒でこの道を使うことで俺への捜査の範囲は届かなくなっている。距離的に俺が犯行に及ぶのは不可能なのだ。
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