2人が本棚に入れています
本棚に追加
姉さんは腐乱死体にしては綺麗だった。実家の倉庫の守り神だ。臭いが酷かったから思わずむせてしまったけど、鼻から空気を吸うのをやめると何とか耐えられそうだった。
ウジ虫が姉さんの目から顔を出す。姉さんの目にはポッカリ穴が空いている。姉さんはガリガリに痩せ細っていた。
心臓辺りの傷が黒ずんだ色で染み付いている。
俺が刺した傷だ。
俺は青いアゲハ蝶を探した。
またいなくなった。アイツは自由気ままに現れては消えていく。
綺麗なのにな…。
俺は手でカメラの形を取り、姉さんに向けてニッコリ微笑んだ。
「笑ってよ、姉さん」
姉さんは、俺のスマイル耐性が付いているのか笑わない。
「寂しいじゃないか」
本当は寂しくなかった。多くの生物の命を俺が握っていた。
女が欲しい時に使うマスクを被る。
「またね、姉さん」
姉さんは確かに手を振った。
俺は満足気に頷いた。
ふと背後からの視線に気付いて振り返る。
何者かが俺を見ている。
俺は姉さんの屍を越え、視線の先に向かった。埃が沢山、崩れ溢れて来る。まだ昼なのに夜のように暗かった。夜の街に慣れている俺だからこそ暗闇に臆することはない。
何とか倉庫の奥まで辿り着いたが、視線は消え失せていた。
最初のコメントを投稿しよう!