十々海レッカ5

10/10
1997人が本棚に入れています
本棚に追加
/415ページ
「さて、悪いが私にはまだやる事がある。失礼させてもらうよ」 「あ、はい。お時間を取らせーー」 その言葉の途中で、彼は消えた。 万丈圭吾の時と同じように、瞬きすらしていないのに消えた。 恐らく時を止めて移動したのだろう。 もし仮に、その停止した時間の中で僕の首筋にナイフでも擦られたら……。 そんな物、防ぎようがない。防げる訳がない。 その気になれば彼は、僕よりも良い暗殺者になれる。暗殺者すらも簡単に殺せる暗殺者になれる。 誰に気づかれる事もなく、隠密に、静かに、ターゲットの命だけを奪う事ができる。 「できない、か」 理由はいくつか考えられるが、有力なのは一つだ。 一番可能性として大きいのが、一つある。 錦之宮楓の力が、その時間を止める能力ですら太刀打ち出来ない程に大きい。 止まった時間の中にさえ介入してくるくらい、彼女の力が大きい。 それが、今考えられる説の中で一番有力で、最も嫌な説だ。 僕にとって一番嫌な、あって欲しくない説だ。
/415ページ

最初のコメントを投稿しよう!