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「さて、悪いが私にはまだやる事がある。失礼させてもらうよ」
「あ、はい。お時間を取らせーー」
その言葉の途中で、彼は消えた。
万丈圭吾の時と同じように、瞬きすらしていないのに消えた。
恐らく時を止めて移動したのだろう。
もし仮に、その停止した時間の中で僕の首筋にナイフでも擦られたら……。
そんな物、防ぎようがない。防げる訳がない。
その気になれば彼は、僕よりも良い暗殺者になれる。暗殺者すらも簡単に殺せる暗殺者になれる。
誰に気づかれる事もなく、隠密に、静かに、ターゲットの命だけを奪う事ができる。
「できない、か」
理由はいくつか考えられるが、有力なのは一つだ。
一番可能性として大きいのが、一つある。
錦之宮楓の力が、その時間を止める能力ですら太刀打ち出来ない程に大きい。
止まった時間の中にさえ介入してくるくらい、彼女の力が大きい。
それが、今考えられる説の中で一番有力で、最も嫌な説だ。
僕にとって一番嫌な、あって欲しくない説だ。
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